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松田探偵事務所
- 困った面々 -
Stage2
6P
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美麗さんは10分ほどで、手に抱えないほどの洋服やカツラなどを持って、帰ってきた。

「今から、足や毛を剃るのは時間的にちょっとだし、抵抗はあるでしょ?」
「はい」
「なので、時期がちょっと合わないけど、長袖とロングのスカートにしてみた♪」
そう言いながら、僕に服を渡してくる。

「上はフリルのついた花柄シャツで、下は足は細いから綿の夏らしい水色のロングスカートで若奥様って感じよ」
「はぁ〜」
「もう、気のない返事しないの。男なんだから一回決めたことは悩まないの」

その後は美麗さんの勢いに流されっぱなしだった。

美麗さんは
「私は美意識が高いから、本格的に行くわよ」
というと、どこからかブラジャーを出してきた。
戸惑っていると、
「はいはい。上を脱いでコレをつけるのよ。通して、後ろのホックを止めればいいの!」

僕は美麗さんの言うがまま、ブラジャーをつける。パットが山ほど入っていて、窮屈だけど、ちょっと安心感を感じる。女性はこんなもの毎日つけているのは大変だな。そのあと、シャツを着て、スカートを履き、鏡面台の前にまた座らされた。

そこからはお化粧タイムで、美麗さんの手はマジシャンの手のように、華麗で的確に動く。まずはひげを剃って、化粧水をつけて、乳液、下地、ファンデーション、プレスパウダー、これでやっと化粧の下地は完成。
その後は、まつげをマスカラで上げてもらい、アイシャドーは優しい感じのオレンジをメインに、頬と口紅は若奥様ということで、ほんのりピンク。

化粧が出来上がって、セミロングのカツラを着けたら、若奥様がどんな人かは知らないけど、それらしい女性が目の前にいた。
「うん。やっぱ似合うわね。若さのおかげか化粧のノリもいいし、羨ましいわ。コレで見た目は完璧。あとは立ち振る舞いね」

美麗さんはそういうと、鬼教官へと変身した。
ヒールの靴を履いての歩き方や、ちょっとした立ち振る舞いをチェックされる。さっきの探偵のレクチャーも受けたので、僕の中ではごちゃごちゃになってしまった。
女性らしさ講座の最後の言葉は
「あなたにとって一番大事なことは、オドオドしないこと。人はオドオドしている人こそ疑うものよ。気をつけなさいよ」

こうして、美麗さんによるレクチャーは終わり、僕は歩きにくいヒールのまま、上の探偵事務所にもどった。

コンコン
「失礼します」
・ ・ ・

「・・・ 真くん?」
「はい」
「いや〜、うまく化けるだろうなとは思っていたけど、ここまでとはね。美麗ママありがとう」
「ほんと、感謝してよ。ここまでにできたのは私だからですからね」
「はいはい」

日和さんは僕のそばまで無言でスーと近づくと、いきなり僕の胸をわしづかみにした。
「うわぁぁ〜」
「私より大きい」
「あら、日和ちゃん。胸が小さいこと気にしてたの。パットなら何枚も持っているからあげましょうか?」
「いえ、いいです」
日和さん無表情のまま、なんてことをするんだ。

「よし、真くんに見とれているのもそれくらいにして、早速仕事に取り掛かるか」
「はい」
「私はお店があるから、もう行くわね。真ちゃん頑張ってね」
美麗さんは颯爽と探偵事務所から出て行った。

ボス(やっぱり照れるな)は真剣な顔で僕に説明をはじめてくれた。
「真くん 今回のターゲットは寺田真一、35歳。奥さんからの浮気調査依頼だ。どうやら、会社の同僚と行ったキャバクラの女の子に入れあげているらしい。奥さんは子供もいなし、離婚を考えている。その離婚を有利に進めるために、証拠の写真が欲しいってことだ。分かるね?」
「はい」
「最初は簡単な仕事だと思ったんだけど、この寺田って男が、器の小さな男でね。まぁ、どういうからくりでかは知らないけど、勤めている会社の専務の婿養子に納まってるんだよ。だからこそ、浮気がばれないように、ばれないように、細心の注意を払っているわけ」
「えっ! そんなに注意深いなら、なんで奥さんが浮気のことを知っているんですか?」
「会社内のものからのリークらしい。専務の家の婿養子なんで、将来はお前らの上司だなみたいなことを平気でいう男らしく。相当嫌われていたみたいだ」
「嫌な方なんですね」
「まぁ、奥さんのほうも相当気が強そうだから、外を向いちまう男に気持ちも分からなくなるが、仕事だから」
「はい」
相手の詳しい情報を聞いて、実感が沸いてきて、ドキドキし始めた。

「まず真くんがすることは、寺田が会社から出てきたら後を付ける。それで女と落ち合う現場に遭遇したら、携帯で俺を呼ぶ。これだけだからね。」
「はい」
「本当は曜日とかが確定できていれば動きやすいんだけど、用心深いからさ、不定期らしいんだよね。なので、真君にはしばらく尾行してもらうよ」
「はい。あの、肝心の写真は僕は取らなくていいんですか?」
「うん。写真取るときが一番ターゲットに見つかりやすくて、危険なんだ。さすがに、そこまでは真くんにお願いできないよ」
「分かりました」
「じゃあ、そろそろ寺田が会社から帰ってくる頃だから行こうか」
「・・・はい」
僕は大きく唾を一度飲み込んでから、ボスの車でターゲットの会社に向かった。

6P
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