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松田探偵事務所
- 困った面々 -
Stage1
3P
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「さぁ、どっち?」

所長さんが近づいてきて、目の前で再度聞いてくる。
へびに睨まれたかえるになった気分だ。

そしたら、急に入り口が「ガチャリ」と開いて、高そうな生成りのシャツを羽織った。これまた背の高い男性が現れた。でもなんか歩き方がおかしいかも。

「おじゃまし〜す。あら優さんセクシイーな格好どうしたの。私を誘っているのかしら?」
「美麗ママ。ノックはしてって言ってるでしょ?」
「あら。ごめんなさい。コンコンコン」
ドアを軽く3回叩いた。
「これでいいかしら? どうせお客なんて否んだからいいじゃないのよね〜」
「たまにはうちもお客さまがいることもあるんだよ。それよりどうしたの? お店には早いんじゃない?」
「昨日お客さんに大きなスイカもらっちゃってね。私1人では食べきれないし、みんなで食べましょうと思って?」
大きなスイカを掲げて見せてくれた。
「あら、本当にお客さんいたの? ごめんなさい」
「その子は真くん。新しいうちの探偵助手だから。身内だよ」
(!!! 僕返事してないのに・・・)
「あらそうなの。助手を雇えるほど儲かってるだっけ、ココって? じゃぁ、お家賃早く払ってくれないかしら?」
「美麗ママ。それだけは待って」
「もう、優さんはいつもそうなんだから。さぁさ、そんなことより早くスイカ食べましょ。折角冷やしてきたのに、温かくなっちゃ美味しくなくなるから。日和ちゃんこれ、お願い」
「はい」
また僕を無視して、どんどん話が進んでいってしまう。
話の流れが急すぎて着いていけない僕を置いて、3人はスカイを食べる準備を始めている。
所長に至っては、スイカの汁が飛ぶといけないからって、そばにあった新聞紙を体に巻いている。なんて格好をしているんだろうこの人は。
「ハイ。切れましたよ〜」
三角形に綺麗に切られ、大皿に乗ったスイカと各自にお皿が配られた。
「今年のスイカは美味しいわね〜」
美麗ママが優雅な感じで少しずつ食べている。日和さんも綺麗で上品な食べ方。所長はまるで志村けんみたいな勢いでむしゃむしゃ食べいている。この人、種出してない。

美麗ママって呼ばれているけど、この人は明らかに男の人だよね。どうしてなんだろう? 僕はまじまじと美麗ママを見てしまっていたようだ。
「真くん。美麗ママに見とれちゃってるね」
「あらやだ、私が綺麗過ぎるからかしら?」
「美麗ママ、お店ならそうかも知れないけど、今はそうじゃないでしょ。」
「冗談よ。真ちゃんて言ったかしら? 私はここの近くで「ドレッシー」って言うオカマバーをやっているの。ここには下がお店の衣裳部屋になっているからちょこちょこ来るのよ」
「そして、このビルのオーナーで、家賃の取立てにも来る」
「まぁ、そういうことね。だからこんな話し方で、こんな仕草なの。分かった?」
と言うと、美麗ママさんは僕に軽いウインクをしてくれた。
「はい、分かりました。ありがとうございます」
「あらヤダ、お礼なんて言われちゃった。どうしましょう。」
美麗ママさんは豪快に笑った。

4人がソファに座りながら、スイカをむしゃむしゃ食べている。僕も状況があまりつかめていないけど、流れで頂いている。すると突然所長が美麗ママさんにとんでもないことを言い始めた。
「美麗ママ。真くんなんだけどさ。女の格好いけると思う?」

??? 女の格好? 僕が?

「うんそうね。真くんちょっと立って、回ってみて」
僕は呆然としてしまって、美麗ママさんの言うとおりにしていた。
「全体的なラインもごつくないし、背丈も165cmくらいでいまどきは普通じゃないの。顔も綺麗だし、いけるんじゃないかしら?」
「良かった。あとで綺麗な女の子に変身させてあげてよ」
「あら、優さんもこっちの世界の住人にイツからなったの?」

なんか、僕の想像もつかない話になってきている。
「あの〜。話がうまくのみこめないんですが? 僕がなんで女の人の格好をするんですか?」
「あのね〜。真くん。お金ないんでしょ。だった自分の体で払うコレが正解」
「体って? まさか?」
「う〜ん。落ち着いて話を聞いて欲しいな」
「無理です」

「あのね。真くんには探偵助手として女装をして尾行をして欲しいわけ」
「尾行?ですか。素人の僕には難しいと思います。第一、なんで女の人の格好をしなければいけないのですか? 男の人の格好でもできると思うのですが?」
「相手は、さっきのおっさん。俺も真くんも顔バッチリ見られているでしょ?」
「・・・見られてますけど・・・」
「顔ばれていたら、尾行にならないでしょ。今までの話の流れで分かると思うけど、他の人を雇うお金はうちにはない。だから、ここは真くん女の格好になって尾行するのが一番」
顔を見られてしまったのは事実だけど、だからといって、女の人の格好をして僕が尾行するのは間違っていると思う。
「・・・でしたら、所長が女の人の格好をすればいいのでは。もしくは日和さんでも、美麗ママさんでも。」
「真くんはバカか? 180cmある女がいたら目立つだろうが。日和ちゃんは事務員だから危ないことはさせないし、美麗ママに関しては問題外。事務所以外の人は巻き込めないよ」
「僕だって、事務所以外です。」
「真くんは、今日付けて『松田探偵事務所』の一員だよ」
ぼくは返事もしてないのに、いつの間にか探偵事務所に一員になってる。

「はいはい。ウダウダ言ってないで、スイカを食べて、食べ終わったら美麗ママに付いて行って」
泣きそうだよ。この人たちは僕の意見を全然聞いてくれないし、僕は何でこんな目にあわなきゃいけないんだ。。。そんなことを考えていたら、本当に目じりから涙がぽろぽろこぼれていた。
「ごめん。泣かすつもりは無かったんだよ。こっちもさっきの尾行していた人の浮気現場を抑えて写真を撮らないと、美麗ママにも家賃も払えない状態だから焦っていたんだ。君の意見も聞かないで勝手に話を進めてしまってすまない。できれば、今回の浮気調査だけでも付き合って欲しいんだけど、ダメかな?」
上目遣いでお伺いを立てないでください。僕はどうしたら言いか分からなくなってしまうじゃないですか。僕がソフトクリームをつけてしまったのは事実。でも探偵なる。まして女装なんて無理だよ。。。

「・・・」
僕は下を向いたまま、何も言えなくなってしまった。
「真くん。ごめん。あまりにも急な展開で付いていけない気持ちを良く分かる。返事は明日でいいから、1日考えてみてくれないかな」
「ハイ。分かりました。1日考えてみます」
僕は、3人に1度お辞儀をして、ドアに向かった。
「真ちゃん。一言だけ言わせて」
美麗ママが声をかけてきた。
「優さんは見た目はこんなだし、態度もひどいものよ。でも人としては誰よりも上等よ。仕事もできるわ。真ちゃんが学べることココにはたくさんあると思うの」
僕はもう一度、振り返って、3人にお辞儀をして探偵事務所を後にした。
3P
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