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松田探偵事務所
- 困った面々 -
Stage1
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「僕はこれからどうして行けばいいんだろう・・・」
体から汗がにじむような暑い日。僕は途方に暮れていた。

 僕は山田 真。24歳。名前も平凡ならば、見た目も平凡でまったく目立たない男だ。
先月末まで僕は印刷工場で営業を担当していた。性格からいって、僕には営業は向かないと思うけど、任されたことは一生懸命やりたいと僕なりに頑張ってきた。
しかし、あるとき急に課長に呼ばれた。
「山田君。ちょっと言いかね」
「ハイ」
課長に別室に呼ばれた。こんなことは初めてだ。
契約もノルマギリギリだけど、達成しているし、勤務してから無遅刻無欠勤なので、なんで呼ばれたのか分からない。

「大変言いにくいことなのだが、わが社の売上が年々下がってきていることは知っているね」
「はぁぁぁ」
「そこでなのだが、・・・キミには急な話で申し訳ないが、今月末でこの会社を退職してもらうことになった」
課長の言っている意味が分からなかった。退職・・・ クビ! ってことだ!

「なんで僕なんですか?」
「山田君、キミはいくつだね」
「24になります」
「キミは若い。他でもやっていけるよ。キミぐらいの年代ならすぐに新しい職場も見つかるだろう」
「はぁぁぁ」
「私みたいに40を過ぎてしまうと再就職は厳しいんだよ。分かってくれ」
「はぁぁぁ」

こんなカンタンな会話で、僕は会社を辞めさせられた。
早い話がリストラだ。

最初のうちは課長の話を真に受けてすぐに仕事が見つかると高を括っていたが、それからハローワークに行ったり、就職雑誌を買って面接に行っているのだが、一向に仕事が決まらない。蓄えもほとんどなくなってしまったし、僕はこれからどうやっていけばいいのだろうか。。。

今日も午前中に一社面接に行ってきたが、緊張してしまって何にも話せなかった。ココもダメだろう。
「どうして僕はダメなやつなんだろう」
そんなことを考えながら、ぶらぶらしているとコンビニの前に会ったソフトクリームの旗に目が留まった。
24歳にもなって、街中でソフトクリームを舐めながら、ただ行く先もなくぶらぶら歩く僕を他人はどんな目で見ているのだろう。

「ドン。ビチャ!! バタン」
僕は角を曲がろうとしたときに、向かいから急に走ってきた背の高い男の人にぶつかって、はじけ飛ばしてしまった。そしてその人のスーツには僕が左手に持っていたソフトクリームがべったりと付いてしまった。

謝らなければと立ち上がろうとしたときに、僕が来た方向に行こうとした中年の男性が振り返ってこっちを見ている。
ってそんなことよりも、早くぶつかった人のところに謝りに行かなきゃと、背の高い男性のところに走り寄る。
「ごめんなさい。僕がボーとしていたから。」
「ちっ!」
「本当にごめんなさい。あ〜これってクリーニングで落ちますかね〜。」
背の高い人は僕の話を全然聞いていないようで、無言で前方を睨んでいる。

「すいません。僕は山田 真と言います。スーツの件どうしたら、よろしいでしょうか?」
「あっ! なんだこりゃ、アイスでべちゃべちゃじゃねぇか」
「すいません。僕が持ってたソフトクリームが付いてしまって」
初めてちゃんと見た背の高い男性は、無精ひげを生やして、薄いサングラスをかけている。ちょっと強面な感じの顔をしている。40歳ぐらいかな。スーツも僕の19,800円のスーツなんかじゃなくて、あつらえた感じの高級品だと思う。

「おう、ぼうずちょっと時間あるか? うちの事務所まで顔出してもらおうか」
(事務所ってヤクザだ。なんてことだ。僕はヤクザにぶつかって、スーツをダメにしまったんだ。僕の人生は今日で終わってしまうかも知れない。)
なんてことを考えていると、ヤクザさんは僕の返事も待たず、僕の右の手首を大きな手で「ガシっ!」と掴むと、有無を言わせずどんどん歩いていってしまう。僕は引っ張られるように小走りになりながら、彼を追っかけて行く。
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