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718.「ありがとう」伊香保旅行

親戚の70代のおじいさん&おばあさんと一緒に、1泊2日で温泉に行ってきました。
おじいさんは一年半ほど前に脳にダメージを受けてしまい半身不随で車椅子生活です。身体を壊してから旅行をすることが出来なくなってしまったとお話を伺ったので、お誘いしたらとても喜んでくださいました。
おじいさんのお誕生日が数日後なのでその記念に、おばあさんが温泉に行きたいとお話をされていたこともあり、お二人がお住まいのエリアに近い伊香保温泉にしました。
伊香保は雪が残っているので私の車のスカイラインもスタットレスに履き替えて、念のためチェーンもトランクにつんで、車椅子のワッペンも車体にぺったん貼り付けて準備はばっちり。



伊香保温泉は階段で有名です。さすがに車椅子をおして階段を上ることは出来ないので、今回は宿泊先のホテルでのんびりと過ごしました。
おじいさんはたまに介護施設と、息子&娘さん(結婚をして別居中)と近くのスーパーに買い出しに行くくらいで、外出をしたくても力の弱いおばあさん一人では身体を支えることが出来ず、ほとんど自宅から出ることはありません。自宅と介護施設以外で夜を過ごすのも、大きな食堂で好きなだけ料理を食べるのも久々だったので終始笑顔でした。
2日目は竹久夢二伊香保記念館に行って竹久夢二の作品を見たり、道の駅で地域の特産物をお土産に購入したり、水澤観世音にお参りに行きました。
水澤観世音横にある水沢うどんのお店に、かつておじいさんは行った事があるそうです。少しだけ覚えていたようで、懐かしそうに店内を見ていました。

 

実は、私はおじいさんと大変仲が悪く、会うこともめったにありませんでした。
おじいさんはかつて私に大きな迷惑をかけたことがあり、年下に頭を下げるのもプライドが許さないようで、私にお礼も謝ることもできず、いつしかお互い居心地が悪い関係になってしまいました。倒れたと親戚から電話をもらった日、病室に駆け付けた私の顔を見て、涙を浮かべながら「すまない」と一言、声をかけてくれました。初めておじいさんから聞いた謝罪の言葉でした。
徐々に記憶が無くなって、今では私が誰なのかすら思い出せないようです。細かい部分は忘れてしまっても、「自分を助けてくれた人」という感覚はあるようで、私の顔を見ると「ありがとう」を口にします。

「ありがとう」

倒れる前からずっとこの言葉を私に言いたかったのだと、おばあさんが仰っていました。
身体が不自由になってしまったのは悲しいことではありますが、嫌な記憶が無くなったことである意味では心が解放されたのかもしれません。複雑な心境です。
途中ケーキ屋さんによってショートケーキと数字の蝋燭を購入して、ご自宅でささやかなお誕生日会を開きました。
「今回の旅行はおじいさんの誕生日プレゼントなんだよ」とおばあさんが説明したら、おじいさんは笑顔で「ありがとう」とまた言ってくれました。



「ありがとう」の言葉が心に響き、
「ありがとう」を沢山言ってもらえた二日間でした。
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2013年2月21日