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486.10年目

最近、鏡に写る自分の顔を見てしみじみ思うのは、自分の顔にできつつあるシワの位置が母のそれと似ていることです。親子ってそういうところまで似るんですね。
私と母は好きなことも似ています。美術鑑賞好きもその一つで、子供の頃に美術大学(日本画専攻)に進学することを決めたのも、母が美術大学に行きたかったから母の夢を叶えたいということも理由の一つでした。大学を卒業して私は自分の自己表現を「女装」という分野にしました。絵を描くのも彫刻を作るのも自己表現であれば、女装もアートだと考えたからです。

2003年3月20日にアルテミスをはじめました。
アルテミスを始めた頃に母に女装を話した際、「女装=性風俗」と考えてしまって大反対をされました。つい十数年前は女装は今よりずっとアンダーグラウンドとして見られる要素が強かったので、母に限らず女装をしない方、女装と関わりの無い方から見れば、ストレートにそう考えてしまっても仕方が無いと思います。
母と自分と価値観が大きく異なるものができたのは初めてだったので母の反対は当時の私にとって衝撃でした。それだけこれから自分が取り組む女装という世界が、自分が考えている以上に偏見の壁に囲まれている孤立した空間であることを痛感しました。

料理に和食・洋食・中華とジャンル分けがあるように、女装も様々なジャンルに分かれます。その中で私が扱う女装は【街に溶け込むような一般的でシンプルな美しい女性装】です。女装をすることで感性が刺激されて心が癒され、ときめく気持ちを得ることを大切にしています。
今日女装は良い意味で受け止められつつあるように思います。メディアの女装の取り上げ方や、多くの女装者の女装のあり方・考え方がその原動力になっていますし、私も日々アルテミスを続けることで扉を開く力になればと考えています。
母は私の女装に対する考え方を理解してからは、今では、私にとって一番の協力者になってくれました。母と同じように少しでも多くの方に、偏見から入るのではなく女装にも色んな表現があることを知っていただけたらと思います。

今年でアルテミスは10年目を迎えます。私も36歳になりました。
顔のシワを見るたびに、時が過ぎ、この身体も年を重ねている現実を思います。もし26歳の自分が今の自分を見たら、老けたことに驚くかもしれません。しかし、10年前の女装と今の女装の成長を見れば喜ぶことでしょう。

大きな病気をすることなく、日々健康で過ごせる丈夫な体を与えてくれた母に感謝をしています。
これからもスタッフやゲスト様、アルテミスに関わる多くの方々と共に、自分達が信じる女装を美しく成長させることができたら幸せです。

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2012年3月20日