▼女装学
コラム HOME女装好学 > 7.人の輪が女装芸術の高みを目指す


0
7.人の輪が女装芸術の高みを目指す

私の就職活動は営業活動のようなものでした。美術大学卒であれば卒業後の就職先はデザイン会社や芸術関係の機関が主です。私は「女装芸術」を極めたいと大学生の頃から考えていました。どこかの会社でOLとなって休日に女装にかかわる方法もありましたが、2足の草鞋(わらじ)を履いてしまっては、女装を極めることは出来ないと思いました。

そんな思いをもって今のアルテミスに似たような仕事場を探しました。しかし当時そのような求人先は1件も見つからず、私にはそれが驚きでしたし、このままでは自分の夢を実現することどころか社会人として生涯納得の行く仕事ができず中途半端に終わってしまう、と危機感を抱きました。そこで女装サービスの企画書を書いて店舗を構えている会社とか様々な売り込み先に営業に向かいました。当時はインターネットがさほど普及していない頃で足で稼ぐ他に方法がなく、また女装に対する考え方も閉鎖的でした。企画書を持っていっても女装と聞くだけで門前払いをされる事も多く、話すら聞いてもらえない状態です。学生でしかも20代の社会経験の無い若い女の意見など本気で聞いてくれる会社は稀でした。中には話を最後まで聞いてくれるところもありましたが、本気でプロジェクトを始めてくれるようなそぶりは感じられません。理想の就職先が無いとなれば一念発起、自分で作るしかないと大学に通いながら朝から晩まで開業資金集めのアルバイトをしました。10年以上過ぎた今思うと、よく1人でやったものだと自分の事ながらつくづく感心してしまいます。当時はまだ20代前半、若さゆえ不安よりも勇気が優先したのだと懐かしく思います。

遂にアルテミスの開業に漕ぎ着けたあの時、最初の1ヶ月は1件もご予約がありませんでした。何もかも1人で始めましたし相談相手もいない状態で、「少なくても100人はお招きできたら」と願いつつ、不安につぶされそうな毎日を過ごしていました。あれからアルテミスも早いもので7年目、その間に辛いことも悔しいことも沢山ありました。しかし、1回もアルテミスを閉めようと思ったことはありません。それは、素晴らしいスタッフに恵まれ、多くのゲスト様がご来店くださり、常に応援をしてくれたからです。アルテミスサロンのゲスト様数も遂に1000番台になりました。1日にお招きできるゲスト様は多くても4人まで、ご予約の多くがリピーターという中で、1000人ものゲスト様がご利用くださったということ、心の底から嬉しく感謝にたえない毎日です。

田舎町から芸術家になりたいと漠然とした夢を抱いて上京をした10代の私と、今アルテミスで活動をしている30代の私との大きな違いは、周りに沢山の人がいるということだと思います。スタッフから学び、ゲスト様から学び、友人や家族から学ぶ。人と人との繋がりは何よりも大切な宝物であることをアルテミスが教えてくれました。私は自分の活動を誇りに思うと共に、これからも大切に温かく「女装芸術」を成長させていきたいと思います。
2009年10月8日