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17.心の中のファッションモデル

女の人生を歩む中で身に着ける衣装について考えると、ウエディングドレスや白無垢等の花嫁衣裳は花舞台用の最もスペシャルな衣装です。振袖となれば、未婚者の第1礼装。特別なことが無い限り、既婚者は身に着けないことでしょう。その他の和装であれば、浴衣は夏の衣装としてたまに選ぶことはあっても、頻繁に選ぶことはありません。カラードレスであれば、お祝い用の衣装ですから年間数回は登場します。それでも回数は多くはありません。学生服に関しては学生時代の数年間ですし、ロリータ衣装や各種制服(OLスーツや各職業の制服など)は身に着ける機会が無い方もいらっしゃることでしょう。そうなると、人生で最も着ることが多い衣装と言えば、何と言っても普段着だと思います。普段着は必要に応じて驚くほど多様に活用されています。それは女性でも男性でも共通です。

スペシャルなお衣装になればなるほど、ある程度コーディネイトのバリエーションが決まっています。ドレスでも学生服でもこんな感じで着こなして、髪型はこんなアレンジで…と、見せ方のパターンがあるように思います。それと異なり普段着はバリエーション豊かで、しかも流行ごとの移り変わりも速く、更に年齢幅も広いのでその変化の移り変わりの速さに驚くことが沢山あります。アルテミスで取り揃えているお衣装の中で一番多いお衣装ジャンルはもちろん普段着です。一言で普段着といっても、カジュアルからお洒落着まで様々です。また、デザインもワンピースからトップス、スカートなど形状も多種多様ですから、アルテミスの衣装ブースの普段着コーナーは常に満員御礼状態です。

アルテミスにご来店くださるゲスト様方から一番多くご希望を頂くお衣装は普段着が多いようです。普段着が最も多くご要望を頂くその理由は、きっと街でよく見かける女性が普段着(外出着)姿であることや、生活に密着している衣装だからなのかもしれません。純粋に一般的な普通の女性らしさを演出できるのは普段着が最も適していると私は思います。というのも、上記のように普段着が女の人生で一番多く身に着けるお衣装だからではないでしょうか。

衣装は料理と共通点があるように思います。スペシャルなお衣装たちは外食料理、普段着は家庭料理。家庭料理も洋食や和食などいろいろバリエーションがありますが、それでいて食べなれても飽きないのが不思議です。特に母の味はどこか懐かしくそれでいて忘れられない家庭の味です。服装に関しても同じ事が言えるのかもしれません。私の女友達や、アルテミスのスタッフ達の服装を見ていると、服装から彼女達の母親の服装の好みが見えるような気がします。私も母とテイストがなんとなく似ています。といっても母は私の普段着を身に着けることはありません。年齢が大きく異なりますから、今の私の服装を母がしたらかなり滑稽です。しかし全体から考慮すると、母が考える服のあり方は私のそれに似ています。全ての女性がそうであるとはいえませんが、ブランドや流行、服に対する拘りは母親と娘は、買い方や考え方が似ているように思います。
私の母が今の私と同じ年の頃に購入した特別なドレスを、社会人になったときにもらったことを懐かしく思い出します。良い生地で仕立てがしっかりとしる、黒系の斬新なデザインで私好みのドレスでした。私はほぼ毎日、黒系の衣装を着ていますし、アルテミスにいるときはおとなしい服装をしていますが、休みの日となればかなり奇抜で派手です。母はあまり黒を身に着けませんし、どちらかと言えばシンプルで清楚で色合い豊かな服装が好みです。このドレスを若い頃の母が着ていたとは想像がしにくいデザインでした。もしかしたら、私も母と同じ位の年になったら、今の母と同じような服装をしているのかもしれません。そう思うと、今の自分と同じ年の頃の母の服装が大変気になります。

女装をすると母親に似ていることに気が付く方も多くいらっしゃいます。女性にとって最もしっくりくる衣装のファッションモデルは、自分の心の中に住む母親なのではないでしょうか。女装でも女性と同じように、服装の好みは母親が基盤にあるのかもしれません。
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2009年11月11日